片田舎から哀をこめて

野山を駆け回る程の自然もなく、天を貫くようなビル群もない。中途半端な片田舎からお送りします

ギター日記

 「ギターで弾き語りをしてカッコよくなりたい」云々とぬかし、リサイクルショップで中古ギターを買った記事を書いたのはまだ暑かった平成最後の夏のことであった。結局その記事では「リンダリンダ」を弾くと言っておきながら前奏の部分をちょっと弾いただけで、サビにいくなりギターを手放して「リンダリンダ〜!」と叫ぶ、というなんともトホホなできになってしまった。
 そんなんで面白い記事になる訳がないし、当然の如くその記事はアクセス数が伸びることもなく、結局のところ僕の手元に残ったのは一抹の寂しさと一本の黒いアコースティックギターだけだった。
「このまんま捨てちゃうのも勿体無いしな〜」
 初めはそんな思いからだった。もはや日課になっているアマゾンプライムでの映画鑑賞の片手間に、僕はポロロンッと何気なくそのアコースティックギギターを弾き初めたのだった。
 教則本を買ってその通りに練習するというのもいいのかもしれないが、僕は元来電化製品に付属している説明書は読まずに捨てるタイプの人間である。コード表と、それからダイアグラム付きの歌詞が掲載されているサイト「U-FRET」を頼りに練習を進めていくことにした。
 やはり最初に弾きたい曲は、というかリベンジしたい曲は「リンダリンダ」である。「ドブネズミみたいに〜」のところを一音ずつだがなんとか弾けるようになって、その先の「リンダリンダ〜」が弾けないというのが前記事のオチだったわけだが、意外にもその先のサビのフレーズはDGAの3コードで弾ける至ってシンプルなものであることが判明した。
D       G         A
リンダリンダー リンダリンダ リンダー


  「U-FRET」のダイアグラムを見ながら、早速僕はジャカジャカとDの音を鳴らしてみた。
リンダリンダ〜♪」
 ……ってあれ。何か違う。Dの音を鳴らしている筈なのだがどうにも雑音というか、余計な音が混じっている気がするのだ。もしやこのギター、不良品を掴まされたのか?などと思いながらスマホに表示されたダイアグラムをよく見てみると、枠外の5弦、6弦の位置にバツ印が付いているではないか。この2つの弦は音を出さないようにするということだろうか。しかしどうやって……。
 と僕ははたと気づいた。考えるべきは左手ではなくピックを持ったこの右手ではなかろーかと。即ちDの音を出す時にだけピックを上の2弦に触れぬようにジャカジャカやり、次のGで全部の弦をジャカジャカ。そのままAを弾いたら、また下4弦だけでDをジャカジャカ。
 これだ。完璧である。しかし弾き語りといっても案外難しいもんである。まさか右手の弾く位置まで注意しなければならないとは。しかしこれでサビは完璧である。このままの調子ならもう三日もあれば曲全体のコピーができるに違いない。


 ミュート奏法に気づき、反省して教則本を買ったのはそれから三日後のことであった。