片田舎から哀をこめて

野山を駆け回る程の自然もなく、天を貫くようなビル群もない。中途半端な片田舎からお送りします

怒髪天を見る(8/3怒髪天presents デリバリーブラッサム”50分一本勝負。男錯乱坊"に参加してきた)

「Don't trust over thirty」ー30歳以上を信じるなー、というのはロックという音楽がまだ出来上がって間もない頃、ロックが若者だけに許された音楽だった時代における基本原則であった。大人という体制における反体制。武器もなければ地位もない若者達に唯一許された抵抗の術は、言葉と、歌と、楽器だったのだ。
 しかしそれも今は昔の話である。俗にロックミュージックが黒人の間で生まれたとされるのは60年以上前だと言われているし、その始祖の一人とも言われるチャックベリーは先日亡くなった。ボブディランは生きる伝説とも呼ばれるし、ミックジャガーに至っては最早ビックリ人間の域である。
 実はこの状況は矛盾しているのである。冒頭述べた原則に従うならば、彼らは30歳になる前に楽器を手放すか、或いはドラッグに溺れるか自宅のプールで溺れるかして死ななければならないのである。しかし、そうはならなかった。彼らはきっと死ぬまでロックンロールを鳴らし続けるだろうし、僕もまた30という年齢を重ねて尚、そんな彼らの音楽を聞き続けるだろう。我々は矛盾を抱えながらロックという音楽を聞き続けなければならないのである。
 しかし、そんな矛盾を一蹴するバンドがある。「怒髪天」というバンドの音楽は俗にR&E、ロック&演歌などと呼ばれており、日本における大人、老人といったイメージの強い演歌と、若者の象徴たるロックを見事に融合させた音を作っているのである。彼らの代表曲「オトナノススメ」の一節にはこうある。


 大人になりたくない 子供のままがいい
 無理だった 生き物だから
 それは無理でした


 30かそこらあたりで
 下らねえ 大人になって
 嘘だ これは 俺じゃない


 大人は最高 大人は最高
 全然楽勝 恐れるに足らず


 大人は最高 青春続行
 人生を背負って大はしゃぎ


 このように、歌詞もまたその矛盾を一蹴するような内容になっており、他の楽曲においても「労働」「仕事」「酒」「大人」「おっさん」等、矛盾を抱えたオーバー30にグサグサ刺さる内容なのである。


 そんな彼らが山形に来てくれるというのだからこれは行かない手はない。という訳で僕は今、山形市にあるミュージック昭和sessionというライブハウスに来ている。ライブ好きの山形県民でありながら初めて来たハコであったが、兎角交通の便が悪いところであった。周りは完全に住宅街だし、100m手前位のところにネギ畑がある様はさすが山形と言わざるを得ない。しかし会場内はというと案外快適である。程よく狭く、程よくステージとの距離が近いし、空調も少し肌寒い程度に効いている。
 ちなみに今回は怒髪天の単独ライブではなく、「SA」というパンクロックバンドとの対バンのようである。ロック&演歌&パンク。それらが一体どのような化学反応を起こしてくれるのか楽しみなところである。


 開演時間の18:45を五分程過ぎたところで照明が落ちた。途端にステージに赤い照明が灯り、SEが鳴り響く。数秒の後、SAのメンバー四人が登場。それぞれ個性的な髪型である。

 客席からの歓声に応えるように手を振るメンバー。歓声がピークに達したところで一曲目を披露。激しいロックナンバーである。正直言うとこの「SA」というバンドに関しては前情報ゼロなので、曲の詳細をお届けすることはできない。
ボーカルのTAISEIがMCで、
怒髪天目当ての方多いだろうけど、その方達にもSAというバンドの持つパワーを感じ取ってくれたら嬉しい」
 という感じのことを言っていたのが印象的だった。
 約五十分のステージで九曲を披露し、モッシュやダイブが起こる等、兎角激しいステージだったのだが、その言葉通りただべらぼうに激しいというだけでなく、その奥に籠もった熱、魂を確かに感じさせるステージであった。後でCD買お。


 SAの五人がステージを去ると、楽器の撤収等の準備時間、観客的にはトイレタイムが設けられた。そして20:10。いよいよ客電が落とされた。そしてステージは先程同様赤い照明に包まれ、怒髪天のメンバーが登場した。照明が切り替わって一曲目は「裸武士」。ノリの良いニューアルバムからの曲で、集まった観客のボルテージが一気に高まる。
 そこから立て続けに「明日への扉」、「酒燃料爆進曲」。今度は打って変わって往年の名曲である。そこから一旦MCタイムとなった。どうやら今日は21:00で完全音止めしなければならないらしく、少し短めのMCですませるにとどまった。今日も増子兄の饒舌なMCがさえ渡る。
 そして切り替わって「ビール・オア・ダイ」、「赤ら月」「夏の扉」と、怒髪天の神髄たるR&E全開のナンバーを繰り出すと、もう一度MCを挟んで「蒼き旅鳥」。夏を思わせるような爽やかなナンバーを繰り出した後は、ニューアルバムより「春、風船」。
 そして若干スローテンポの曲、「ひともしごろ」を披露し、
会場の熱気、一体感がピークに達したところでもう一度MCタイム。今日来てくれたオーディエンス、そして対バンのSAらに感謝を述べるなどした。ちなみにこの時20:50。どうやら残り二曲やるらしいのだが、果たして21:00 に間に合うのだろうか。
「残り二曲、この二曲をやる為に山形に来ました!!」
 と叫ぶ増子。そして披露したのは「セイノワ」。増子節全開のこの曲は筆者もお気に入りの一曲である。サビで会場全体が声をあげて合唱する様は最早感動的ともいえた。
 そして最後の一曲は「HONKAI」。筆者初聞きの曲だったが正直鳥肌が立つくらいの良い曲だった。


 ロックバンドが理想や夢歌わずにどうする
 どんなクサい台詞でもロックに乗せりゃ叫べる!


 サビの部分はまたもや会場揃っての大合唱。僕も二回目からは思い切り叫んだ。
 会場全体が一つになり、時計の針がピッタリ21:00を指したところで今日のライブは終了となった。大歓声の中、増子はまた山形に来ることを約束し、ステージを降りた。


まとめ


 正直言うと今回は怒髪天目当てで行って対バンのSAはおまけ程度に考えていたのだが、そのステージに圧倒されてしまった。バンドのロックにかけるひたむきな思い、情熱。その気迫で頬を叩かれたかのような衝撃を受けてしまった。
 勿論当初の目当てだった怒髪天のステージも素晴らしかった。CDからは伝わることのないアーティストの曲にかける魂。それを如実に目の当たりにしたような気分である。やっぱりライブっていいですね。なんてどこかの解説者みたいなことを言ったところで筆を置かせてもらう。