片田舎から哀をこめて

野山を駆け回る程の自然もなく、天を貫くようなビル群もない。中途半端な片田舎からお送りします

涼しさを求めて紙で作った服を着てみた

 近頃世間では猛暑の話題がしきりに取り上げられているが、こと僕の六畳間はというと、これが案外涼しい。立地的に風通しが良いというのもあるが、どうにもその風を通す穴がポツポツと開いているらしい。引っ越してまだ二ヶ月。恐らく冬場に地獄を見るであろうことはとりあえずこの場では置いといて、今問題になっているのは室内外での気温の差である。


 夏場、エアコンがキンキンに効いた部屋から、やむを得ず何かの用事があって退出したその一瞬間。モワッと擬音を立てて襲う熱気の不快感を、読者諸兄も一度は体験したことがあるだろう。僕とてできることならばエアコンキンキンすきま風スースーの我が愛しの六畳間でのんびりだらだらフォーエバーしていたいところだが、悲しきかな誰しにも平等に月曜日の朝というものはやってくる。いやだなぁいやだなぁ。ドアノブに手をかける度に僕は思う。そもそも目に見えて不幸に襲われるのが分かっているというに、何故人はその不幸に立ち向かわねばならぬのか。とはいえ部屋のエアコンは既に切っている。じきここも猛暑の海に沈むだろう。ドアノブを回す。ああ何故人は辛いことから逃げることができぬのか。「暑いんで今日休みます」が何故通用せぬ世の中な……モワッ。


 もうこんな生活嫌だ。しかし現状熱に浮かされて退職届を上司に突きつけられる程僕の経済事情は芳しくないし、突きつけた退職届に書いた一身上の都合とは何だと上司に問われ、「暑いからッス」ではヘルニア持ちの僕の上司がズッコケてケガを負いかねない。できることならば何とかこの「モワッ」を緩和し、穏便に済ませるのが僕と会社双方にとってwin-winな選択と言えるだろう。然るに、僕はこの解決策を考えねばならない。


 ドラえもんのいつだったかの回で、ドラえもんのび太に夏と冬どっちが好きか、という旨の質問をしたことがある。それに対してのび太は即答で冬と答えた。何故かというと、寒いのは服を着込めばなんとかなる。しかし暑い時はある程度服を脱げばいいが裸にはなれないから。僕はここに「モワッ」を解決する道があるとみた。そう、要するに「モワッ」がくる際になるだけ裸に近い状態ならば、ある程度暑さを軽減できるということである。だがしかし、確かにのび太が言うように、一応文明人たる僕もまた裸になって外を出歩くことはできない。
 限りなく裸に近い文化的で最低限度の服とは何か。僕は考えてみた。そして一つの結論に達した。


 紙で服作ればいいんじゃね?


 一人暮らしになって強く思うのだが、チラシ程邪魔なものはない。一々目を配っていないといつの間にか郵便受けを圧迫するし、回収したらしたで、サッと目を通して終わり。あとは月一の古紙回収まで部屋の中で埃を被るのみである。この無駄オブ無駄たるチラシを服として再利用することができるならば「モワッ」を軽減することができるし、且つ処分するエネルギーが節約され、ひいては地球温暖化に歯止めがかかり、この暑さそのものが和らぐ。一石二鳥というわけである。というわけで僕は早速チラシ服の制作に取りかかった。


 ルール


 1.材料は紙、ガムテープ、糊のみであること
 2.上記材料を用いてTシャツを制作すること
 3.完成したらそれを着て外に出られること



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 こちらが今家に溜まっているチラシの全てである。イメージとしてはこれらをガムテープで1m×1mくらの大きな一枚の紙にし、これを糊で二枚重ね合わせる。その紙にシャツの型を模写、線に沿って切り取る。といった具合である。



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 チラシを並べてガムテで固定。



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 その上にもう一枚糊で紙を貼り付ける。



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 Tシャツを敷いて線を書いていく。



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 これを切り取って完成。続いて袖。



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 先程の袖のない部分に合わせて袖を書く。これを切り取る。



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 やっとシャツっぽくなった。



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 一色だけだとつまらないので袖には黒い画用紙を重ねる。これでシャツの部品完成である。



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 袖をガムテやら糊やらで貼り付けて完成。


 結構時間がかかったがなんとか完成。というか作ってる内に妙にディテールにこだわってしまって百均で模造紙を買ったり黒の画用紙を買ったり、あと普通に糊が足りなくなって買い足したり……と資源の節約云々という前提から大きく逸脱してしまったような気がするのだが、その甲斐あってか想像以上のクオリティーに仕上がった。
 では早速、外に出る前に試着といこう。僕は逸る気持ちを抑えつつシャツを頭から被った。頭頂部の穴あき部を射程に捉えつつまずは右腕を通して……。


 …………ん?あれ?あ、これだめだ、まずい。


 僕は慌てて服を脱いだ。問題発生である。



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 まず僕はバンザイした状態で服を被って袖を通したのだが、袖が下向きで固定されてしまっている為、脇腹部分が上に引っ張られた圧力で裂けてしまったようである。そしてなにより、



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 こんなん頭入る訳ないやん。流石にこれは僕がバカだった。

 


 問題点としては以下である。
1.首回りがキツすぎて頭が入らない
2.袖が固定されているので動かせない


 まず1。これは服の見た目的に、頭が入るまで首回りをカットする訳にはいかない。ではどうすればいいか。僕の取った解決方法は、「服を装着後組み立てる」というものである。即ち、一旦片方の脇部、肩部を裁断し、袖を取り外す。これによって体を挟み込むように服を着ることが可能となり、その状態で裁断した部分を貼り付ければよいのである。


 んで、次に2。これには相当迷った。何故なら袖を作る下りをなかったことにして、これはノースリーブの服だと言い張ることが不可能ではないからだ。しかし僕はこんなところで妥協はしたくない。故に僕が取った解決方法は、袖を独立させて可動式にするというものである。

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 このように袖を長めに作り直し、「紙」紐を上下二カ所に取り付ける。


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 そして本体に袖ではなく紐だけを貼り付ける。横から見るとこんな感じ。うまいこと可動できるようにした。

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 完成!!


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 着てみた感じ。離れてみる分には全く遜色ない。

 


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 一応袖の部分が気になるのでリュックを背負ってみた。完璧である。


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 胸の部分のプリントは、百均で売ってた文字シールを貼った。「It is Not Paper.」わざわざ服自身が主張しているのだから、これで紙とバレることはないだろう。


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 ちなみに余ったシールは勿体ないのでトイレのドアに貼っておいた。エモい。

 


 さて、完成したところで本記事は終わり、というわけにもいかない。僕は上記ルールにおいてこれを着て外に出ると明記しているのだ。しかしなぁ。なんか作っているうちにただ外に出るだけじゃつまらないなぁ、という気がしてきた。というか休日を丸々使って作った自信作なので普通に皆に自慢したいレベルである。然るに、今回はこんな実験をしてみようと思う。


 紙の服を着たままコンビニで買い物できるのか?


 ルール
1.紙の服を着たままコンビニで買い物をする
2.入店から退店まで店員、その他客に指摘されなければクリア
 


 という訳で僕は今某所のローソンに車で来ている。何故わざわざ車で?と思うかもしれないが、その理由としては、まず人から隠れられる安地を確保できるというのと、近場のコンビニを使いたくないからということである。確かにこの服は自信作ではあるが所詮は紙である。店内を移動中に服が破れてアラいやん、なんてことも考えられるわけで、そうなった場合もう二度とそのコンビニは使えなくなってしまう。それがもし最寄りのコンビニだったとしたら、それは僕にとってライフラインを絶たれるのと同義なのである。故に遠方に足を伸ばせる車で来たというわけだ。と御託を並べたところでそろそろ行こうではないか。勿論例のブツは既に装着済み。幸いにも店内に人影もなし。いざ、出陣。


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 録画を回したままのスマホを車内に置いて突撃。


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 ウィーン。自動ドアをくぐる筆者。すぐに「いらっしゃいませー」と店員の声がかかる。


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 入店からから約二分


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 やりきった男の顔


 行けた。普通に対応された。特に服に目もくれず紙の擦れるカサカサ音も気にせず普通の対応。なんか普通すぎてこっちがびっくりする位だった。やはり服の完成度が高すぎるようである。



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 ちなみに無事成功した安心感で車のシートにどっかと腰を下ろした拍子に服はご臨終を迎えた。僕の休日よ、安らかに……。

 

 


まとめ


 うん、まあ、ローソンに車を走らせていたぐらいの段階で僕も気づいていた。確か本記事冒頭で述べた主題は「紙の服で涼しくなれるか」というものだったはずである。しかし、実際はというと主旨がブレにブレブレ、企画そのものがブレイクしていれば服もブレイクするという、僕のブログ史上稀に見る程のよく分からない記事になってしまっているのである。しかし同時に僕のブログ史上稀に見る程、やっていて、書いていて楽しかった記事であることは否めない。故に、まーいっか、ってな感じである。


 あ、でも思い返せばあのローソン店内にいた時、バレないかどうか「ヒヤヒヤ」したから冒頭の主題回収できてるかもしれない。んなわけない。