片田舎から哀をこめて

野山を駆け回る程の自然もなく、天を貫くようなビル群もない。中途半端な片田舎からお送りします

ではFANTASY WORLD Ⅳ、はじめます(STARMARIEの4thアルバム「Fantasy WorldⅣ」をレビュー)

 先月5月の末日、僕は諸般の事情でもってTOKYOFMホールにて始めてSTARMARIE、引いてはアイドルというジャンルに初めて触れた。その時の様子を書いた記事はありがたいことに予想を遙かに上回るアクセス、感想を頂き、ブログ設立以来初の400アクセスを頂くに至った。本当に感謝してもしきれない。
 それから僕はこのグループにどっぷりとはまり、6月22日に行われたFANTASY WORLD Ⅳツアーファイナルに参加する予定を立てたわけだが、それに先立ち、やっておかねばならないことがあるのに気付いた。

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 STARMARIEを知るきっかけになったこのCD、「FANTASY WORLD Ⅳ」のレビューをしなければならないのである。これから新たにSTARMARIEを聞きたいと思っている人や、以前までの僕のようにそもそもアイドルとは何ぞやと思っている人には紹介の意味をこめて。それから既存のマリストと、何より僕自身にはより曲の理解を深める為に。
 ツアーファイナルまでそう時間がある訳ではないので、新規のファンがこれからチケットを取ってツアーファイナルへ行けるのかというと甚だ疑問ではあるが、せめてこの記事がSTARMARIEというグループを好きになる足がかりになったのなら幸いである。

 

レビューの際の注意点

 

 出来ることなら全曲丁寧に解説していきたいところだが、ページ全体の文量や読みやすさを考えて僕が特に気に入った曲だけを書いていく方式を取る。あの曲はないのか、この曲がないなんてふざけてる、みたいなコメントは差し控えて頂ければ幸いだ。

 

 

1.悪魔、はじめます。

https://youtu.be/lyLF4qX0lxo

 FANTASY WORLD Ⅳの冒頭を飾り、リード曲にもなっている「悪魔、はじめます。」。こちらはyoutubeにも挙がっているので見たことがない人はぜひ視聴を勧める。というか、絶対に見た方がいい。というのも、CD音源のレビューでこれを言ってしまうのもなんなのだが、STARMARIEの魅力の半分はそのダンスパフォーマンスにある。いや、半分以上といっても差し支えないかもしれない。勿論、楽曲の描き出す世界観やそれを歌う彼女達自身の魅力も十分素晴らしいものであるが、やはり一番はダンスパフォーマンスである。MVの若干の低予算感は否めないが、それを持ってして尚有り余る程、彼女らのダンスパフォーマンスは素晴らしい。出来ることならば生で、間近で見た方がその魅力は伝わりやすいだろう。
 話が逸れてしまった。この曲は現代社会における闇、出来れば目を背けてしまいたくなる事象、事柄を引き合いに出し、それらを持ってして我々は悪魔になるべきではないかと問いかける曲だ。初っ端からアイドルグループが歌うとは思えない程ダークで、そしてロックミュージックを思わせる激しい曲調の一曲である。僕が特に気に入ったのは以下の部分である。

 

人間は苦しいだって良いことを語らなければ仲間入れてもらえなくて
人間は苦しいだって良い人を続けても給料増えない僕も悪魔、はじめます

 

 そして曲の最後は上記の部分をリフレインして終わる。

 

人間は苦しいだって嘘ばかり 君だってそうなんでしょ?
ではファンタジーワールド4、はじめます。

 

 ちなみに記事タイトルにはこの部分を引用させて貰った。メタい感じが最高である。

 

 

3.妻はハイドに会ってはいけない


https://youtu.be/vx4Yl9njZBA

 

 こちらもyoutubeに動画が上がっている。こちらは2月4日の中野サンプラザでのライブの様子である。キレキレのダンスが最高だ。
 さて曲の内容はというと、不審な動きをする主人公「僕」の妻がハイドという名の悪魔に捕らわれる様を描いたダークなストーリー。ちなみにハイドはL'Arc-en-CielのHYDEとは関係ないようである。ここで注目すべき歌詞は以下である。

 

 もう一人の自分がいる 正体見せる満月の夜
 本性という名の悪魔ハイドが姿現す

 そしてこの最後の歌詞

 妻は知るハイドの正体 君の首絞める
 僕の正体を知ってしまったから

 

 つまり、悪魔ハイドとは主人公の僕自身だったのか……というと正確にはちょっと違うと思う。妻を縛り付け、束縛し、欲望のままに妻を求めるその醜く歪んでしまった愛が、本人の気が付かぬうちに悪魔ハイドとなって現れたのではあるまいか、というのが僕の予想である。この辺色々解釈できると思うので違う解釈の方はコメントを頂ければ幸いだ。

 

 

4.僕と少女霊媒師たち

 

 僕がSTARMARIEを知る直接のキッカケになったのは実はこの曲である。というのも、この曲はかの大槻ケンヂ御大が作詞を担当したものなのである。一曲目の「悪魔、はじめます。」に負けず劣らずなロックサウンドは、若干だが彼がボーカルを勤めるバンド、筋肉少女帯を彷彿とさせる。で、歌詞の内容はというと

 

 死について一緒に歌っている

 あなたもいつか死ぬ
 リアルにどん引きだね 気まずいったらないね
 そうさ そしたらどうする?
 降霊会 やっちゃう? ボーダーライン
 少女たちは生と死の境から勇気得る
 霊媒

 

 さあ霊媒師の言葉を聞け
 離れててもひとつなんだよ
 霊媒師の声で踊れ
 必ず会える
 終焉見えているからこそ 今
 霊媒の歌で踊れ

 

 ここで言う少女霊媒師たちというのはSTARMARIEの五人のことで、僕とはすなわちリスナー、STARMARIEのファンのことを表している。降霊会とは恐らくライブのことだろう。なんともオーケンらしいメタ視点な例えである。そして極めつけは以下の部分。

 

 霊媒師のほとんどは実はトリックらしいさ
 そうさあやかしさ 絶対に会えっこない
 君とおしゃべりできるのあり得ない嘘

 

 STARMARIEの歌詞には生と死の要素がかなり大きく含まれている。その生と死を、会いに行けるアイドルという存在のあやふやさ、つまり虚と実とにかけているわけである。そしてサビで何度も繰り返される「終焉見えているからこそ」というフレーズは、死を歌う彼女らと、それを聴く我々にもいずれ死が訪れるという現実を否応なく突きつける。
 ほんと、オーケンらしい。

 


5.ラ・カンパネラ君に贈る

https://youtu.be/2Uz602W3urc

 

 美しいピアノの旋律に紡がれるメロディ。そしてそれに乗せた儚くも美しい物語。僕がこのアルバムの中で一番気に入ったのがこの曲である。
 主人公はとあるピアノ奏者。ある日リサイタルを行う筈の「君」が不慮の事故で死んでしまう。その霊が主人公の前に現れ、「私の代わりをあなたが務めてほしい」と頼む。「君」の霊にレッスンをつけてもらった主人公はリサイタルへと挑む……という感じ。ラストの勇気を貰える描写がいい。

 

 主人案じる寂しいピアノ悲しい知らせ
 彼女は不慮の事故で死んでしまったらしい

 

 しかしほんとよく人が死ぬアルバムである。

 

 

8.惑星(ほし)を翔けるパイロット

 

 アルバムは後半戦。八曲目は本アルバム一番の悲哀を放つ「惑星(ほし)を翔けるパイロット」である。作詞は日高央というミュージシャンだそうだ。主人公は唯一人で惑星を漂うパイロット。

 

 砂浜わたしは独りきり
 遠き声を探している
 荒波夕凪潮風が
 そっと頬をなでてく

 もし今ここで二人きり
 なれるならもう迷わない
 ああこの命捧げても
 わたしも独り闘ってく
 惑星を翔けるパイロット
 Baby,INeed You,Too
 Forever and Everone

 

 恐らく主人公は宇宙を漂う長い旅路の中で愛する人を亡くした、或いは離ればなれになってしまったのだろう。もう二度と会えぬ後悔、絶望。しかし遠く流れる星々はどこまでも輝き、美しい。そしてそれに合わせるかのように跳ねるどこかポップな曲調は、なんとも皮肉的であり、僕らの心を抉る。しかしそこがいいんだな、これが。

 

 

10.Fantasy World For You


 アルバムタイトルのFANTASY WORLD Ⅳとかけた、表題曲と言っても過言ではないこの曲。他の曲と比べると比較的明るいイメージの曲である。

 

 これしかない!って言えるそんな夢があるか
 傍観者よそれがどう映るかに興味はない
 幸せの基準勝手に決めないで
 大事にしたいこの時代走り抜けて行け

 

 別に手を抜く訳ではないのだが、この曲に対して僕は正直あまり解説をつけたくないし、感想も書きたくない。何故なら解説をしようものならそれは蛇足になってしまうし、自分の所感を述べればこの曲に対する個々人の思いや考えが薄まってしまうからだ。とりあえず、聞いて。僕がここで言うのはそれだけである。

 

 

11.ドント・ルッキン・フォーミー


https://youtu.be/N4K06qk5c3o

 

 こちらも動画が上がっている。というか、音源か。あまり凝った編集をしている訳ではなさそうなのでタイトル通り目でも瞑って情景を頭に浮かべた方がいいかもしれない。
 曲の感想を述べると初聴き時に前曲、「Fantasy World For You」で終わりかな、と思ったのだが、もう一トラックあって非常に面食らった。先程も言ったように「Fantasy World For You」に対して解説や感想を入れるのは野暮である。故に、アルバム自体もこれ以上曲を入れるのはどうにも蛇足のような気がしてならなかったからだ。しかしそんな思いを吹き飛ばすように、この「ドントルッキンフォーミー」も良曲である。

 

 時を止めていつか僕のこと忘れても
 「何度だって」なんて映画みたいな台詞
 うまく言えるかな
 僕の料理美味い?

 君の現役時代には敵わないけど
 今夜は特に冷え込みそう
 どこへも行かないで欲しい おやすみ

 英語の教師をしてた君は
 凛として誰からも愛されて
 子供は授からなかった家庭 だけど幸せだった

 

 僕の名前言えますか?
 靴下は上手に履けましたか

 

 夜の街を抜けて越えて海が見えるまで走った
 「ワンダホービュー!」って綺麗な
 英語の発音に胸が躍ったな
 君は還帰る はしゃぐ
 まるで遅れてきた子供授かったみたい
 眠れる僕の腕から逃げ出していった
 書き置き”ドント・ルッキン・フォーミー”

 

 ちょっと長めに引用してしまった。しかしそれ程にこの曲は歌詞の全体を見ないと内容が今一掴めないようになっているのだ。つまり、他の曲と比べ、極めて抽象的な表現が多い。その断片を読み解きながら歌詞を見ていくと、主人公の「僕」が、何かの病気で記憶が薄れていく、認知症のような状態に陥った「君」に対して語っているストーリーのように読みとれる。

 

 そういえば告白君からだったな
 ねぇ僕のどこが好きだったの?
 見た目じゃないよね
 うん それくらい理解している

 

 個人的にここのラスサビ前の主人公の、「君」に向かって喋る独り言のような台詞が、歌詞とリズムがピッタリ嵌まっていて頭の中で何度もループしてしまう。

 

 ・・・いつから気付いていたの?僕の苦悩に

 

 見つけた

 

 ここでの見つけた、というのは前項で「ドントルッキンフォーミー」と書き置きをした「君」を主人公が見つけたという意味だと思う。物理的に見つけたのかはたまた記憶の中の「君」を見たのかそれは個々人の受け取り方に任せるが。そして最後に「君」を見つけた主人公に警報が鳴り響く。それはもしかしたら「君」からのメッセージなのかもしれない。

 

 ”ドント・フォアゲット・ミー”

 

 


総評


 ダークかつポップ、キュートかつクレイジーな彼女らの楽曲は、ある時は人を絶望の闇へと落とし、またある時は人を励ます愛へと変わる。その絶望と希望の相転移、あるいは生と死の狭間を、歌とダンスで表現する彼女たちは限りなく妖しく、美しい。
 STARMARIEの魅力の一つは、他の正統派アイドルグループが歌うような、「あなたが好きよ~♪応援してる~♪愛してるぜベイベ~♪」みたいなストレートな表現があまりないことである。もしかしたらそれは万人受けするものではないのかも分からない。しかし、届く人にはその良さはちゃんと届く。メメントモリという言葉があるように、生きていく上で死はどこまでもついて回るし、希望の裏にはいつだって絶望がこびりついている。この世の森羅万象全てを歌にしようと思った時、その陽の裏にある陰の要素をないがしろにする訳にはいかないのだ。彼女らはその陰の要素を歌とダンスで限りなく陽に近づけた状態で我々に提示しているのだ、と僕は思う。

 いや、思うのだが、結局のところ本記事はファン歴数ヶ月程度の人間が書いたものなので、歴戦のマリストの方々からすれば見当違いのことを言っているかも分からない。今回解説、解釈をした収録曲に関しても言えることだが、私のこの曲の解釈はこうだ、とか私の思うSTARMARIEとはこうだ、みたいなのがあれば是非コメントかなんかで教えて頂きたい。
 と、まとめを読者に丸投げしたところで筆を置きたいと思う。この記事がツアーファイナルに向けて何らかの足掛かりになったのなら幸いである。

 

 

■「FANTASY WORLD Ⅳ」収録曲
1. 悪魔、はじめます。
2. Hey,My sister
3. 妻はハイドに会ってはいけない
4. 僕と少女霊媒師たち
5. ラ・カンパネラ 君に贈る
6. ブラック❤︎バレンタイン
7. 本当は怖い桜の話
8. 惑星を翔けるパイロット
9. 星の旅人たち〜明日、世界がなくなるとしたら〜
10. Fantasy World For You
11. ドント・ルッキン・フォーミー