片田舎から哀をこめて

野山を駆け回る程の自然もなく、天を貫くようなビル群もない。中途半端な片田舎からお送りします

俺の道

 このままでは駄目だ。何度そう思っただろうか。僕はこの状況を打開する手だてを未だ見出しかねていた。そして先にやってきたのは無情にもタイムリミットだった。自分の進路を決定付けなければならない担任との二者面談の日がやってきてしまったのだ。

 

「んで、田中はなにすんなや?」

 

 と担任は聞いた。確か半年くらい前、僕はここで小説家になることを宣言してやるつもりだったのだ。しかしその為に必要な最低条件、がどの程度かは分からないが、少なくとも処女作を完結させるにすら至れなかった僕に、そんなことを言える資格があるとは到底思えなかった。となるとだ、選択肢は元の通り二つになるわけだ。進学か就職か。まあ、僕にとってはどちらも普通という名の一本道にしか感じられなかったが。
 しかし、それでも僕は書くことを諦めた訳ではなかった。僕はまだ、きっと多くの時間さえあればなんとかなると信じて疑っていなかったし、例え普通の道を一度辿ることになろうと、そこから外れることも僕ならきっと容易だろうと。そう考えた時、僕はこの二本道のどちらを行くべきなのだろうか。
 普通に考えれば、進学だ。社会の荒波に放り込まれる前に四年間の猶予が与えられ、その間に好きなことができる。しかし、デメリットとして金がかかる。これが一番切実で、痛切で、実際的な問題である。我が家は三人兄弟で、上の兄は専門学校へ行ったし、妹は既に進学校へいる。大学へ行くのは必至だろう。それでも父は「進学したいならしてもいい」と言って僕に笑った。しかしその笑顔が作り笑いであることを僕は既に知っていた。父の部屋のレターケースの中を見て知っていた。子供三人を学校へやる金なんてないということを。
 それに、問題はまだある。それは僕がこれから受験戦争に身を投じなければならないということである。知っての通り僕は勉強に関してはアンポンタンポカンである。戦争に例えるなら足軽歩兵といったところだ。そんな奴が「俺、この戦争が終わったら、小説書くんだ……」とか言ってるのだから生き残れるはずがない。道半ばで死んでバットエンドになるのが目に浮かぶようだ。では、トゥルーエンドは一体どこにあるのだろうか。と、ここで第二の選択、就職が浮かんでくる。
 そもそもこの情報化社会の時勢柄、小説を書くうえにおいて必要な知識が、大学でしか得られないとは考えにくい。それに、現段階で就職を選べば残り半年近くの高校生活を小説だけに絞って過ごすことができる。もし、もし仮にだ。この半年の期間中に小説家デビューとまではいかないまでも処女作を完結させてネットにあげ、小説家としての一歩を踏み出すことができたなら?社会人になって働くといっても全ての時間働いている訳ではない。というか、高卒での就職口なんてほとんど単純労働だろう。働きながらにして小説のことを考え、家にいる時間はずっと書く。なんてことができるのなら、もしかしたら一番賢い選択肢は……。

 

「あはは、就職っすかね、やっぱり」

 

 僕は後頭部を掻きながら担任に言った。